「震災後の外壁塗装」

今もまだ記憶に新しい東日本大震災が起きた後、僕が被災地復興の手伝いに行った時の話だ。   被災地に対して何か手伝えることはないか? でも、言ったら迷惑になるんじゃないか? と、いろいろな思いが頭を巡る中  「壊れた家の壁を見てくれないか?」 遠くに住んでいる親戚のおじさんから連絡が入り、 それをきっかけに僕は東北へと飛んだ。 被災地の物資不足を聞いていたので 塗装材や刷毛、ローラーなど近隣のホームセンターを周り買えるだけ買い現地へと向かう。 幸いにも津波や倒壊被害のない地域で 数年ぶり-いやもしかしたら10数年ぶりか-に訪れた、その土地の中でも大きなおじさんの家も無事に建っている。 念の為外壁をぐるりと見て周り、大きなヒビや崩れがないことを確認してから劣化して汚れた壁を白く塗っていく。 「手伝おうか?」 おじいさんがやってくる 「何をしてるんだい?」 近所の人もやってくる 「ボランティアですか?」 どこから来たのかわからないボランティアもやってくる。 いつの間にかの大所帯。 その土地の人、親戚の僕、縁もゆかりもない人 いろいろな人が壁を塗りながら打ち解けあって笑顔になっていく。 そして、2日間かけて壁は塗られた。 きっと塗っていた時間より喋っていた時間の方が長かったかもしれない。 帰り支度をすまして、僕は帰路に着いた。  「壊れた家の壁を見てくれないか?」 もしかしたらおじさんは震災で暗くなった町の人を明るくするきっかけとして僕を呼んだのかもしれない。 しばらくして、世の中が少し落ち着いてからおじさんの家に遊びに行った時 真っ白に明るくなった壁を背にしておじさんが言った 「お陰様で明るい家になったよ」 おじさんの笑顔も壁と同じように真っ白で明るく光っていた。

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