同居していた親が介護施設に入ると、
妻、「家の塗り替えをするから」
私、「今しなくたって良いだろ」
私達夫婦が暮らしているのは、親が建てた一軒家、狭いが四季の移ろいを感じられる庭もある。
私、「紅葉が終わってからで良いじゃない」
妻、「紅葉が終わったら、来年にしよって、貴方、言い出すでしょ?」
当たっている。
暮らしている家には愛着がある、親が苦労して建てたことも知っている。
家の塗り替えのことを親戚に相談をすると、言われたのは「嫁姑問題にならない?」
私自身も嫁姑問題を危惧している。
親が入っている介護施設に行くと
親、「変わりはないか?」
私、「別にないよ」
親には家の塗り替えのことを言えなかった。
家に帰ると
妻、「貴方、家の塗り替えのことをお義父さんと話した?」
私、「何も話してないよ」
話してないのは、単に勇気が無いから。
私には、私に似た臆病な息子がいる。
息子、「良いの?」
私、「何が?」
息子、「お母さん、家の塗り替えをしちゃうよ」
私、「A君(息子のこと)は、家の塗り替えに反対?」
息子、「うん」
私、「どうして?」
息子、「お爺ちゃんが悲しむから」
私、「そうだよな」
仕事を終え家に帰ると、リビングのポスターの日付に「塗り替え」と書かれていた。
こうなったら、もうどうしようもない。
塗り替えの当日、家の前にトラックが止まった。
鳴るな、鳴るなと願っても、玄関チャイムが「ピンポーン」と鳴った。
妻、「貴方、出て」
息子は私がどうするのか伺っており、自身の不甲斐なさを痛感した。
私、「はい」
玄関チャイムを鳴らしたのは、作業服を着た男。
男、「塗装屋です」
家の塗り替えには、約1ヶ月掛かる。
塗り替え完了まで残り1週間を切った時、介護施設に入っている親が一時帰宅で帰って来た。
まずい!
息子、「お爺ちゃん、おかえり」
父親、「ただいま。我が家が一番良いな」
私、「???」
妻、「お義父さん、おかえりなさい」
父親、「ただいま。世話になるよ」
私、「???」
妻と息子が居なくなったため
私、「怒ってないの?」
父親、「何が?」
私、「家の塗り替えだよ」
父親、「どうして俺が怒るんだ?」
私、「父さんに許可なく家を塗り替えたからだよ」
父親、「何を言ってるんだ?お前の奥さんから、事前に塗り替えの相談はあったよ」
私、「えーそうだったの!」